読み手の紹介

伊藤綾子 伊藤綾子 秋田放送でアナウンサーを務めた後、フリーアナウンサーとして活躍。現在「news every」(日本テレビ)でキャスターを務めている。

朗読の収録が行われたのは、急に暑くなり始めた頃。日差しが眩しい日で、盛んに鳴く蝉の声を聞きながら、私は少し戸惑っていました。数日前にこの本を手渡されたとき、題名を見てドキッとしていたからです。「あれから」2年半が経ち、「それから」の被災地のために、自分には何も出来ていない。それを突きつけられたような気がしました。それを朗読する。どんな声色で、どんな風に読んだらいいのだろうと。震災に関するニュースは、福島の原発も含め、毎日あります。復興に向けて動き出しているというもの、策が見出せず困窮しているというもの。私は、それらをまっすぐ伝えることだけを考えて放送に臨んでいます。それしか出来ないのです。震災や原発について考えること、語ることはとても難しいです。どう言い表しても、誰かを傷つけてしまってはいないか、不快な思いをさせてはいないかと、口が重くなってしまいます。復興を願うばかりで、具体的に行動を起こすことも出来ない。しかし、自分と同じように戸惑いや、やるせなさを感じている人も多いのではないかと思います。ならば、自分の中で渦巻いているものもひっくるめて、この朗読にのせようと、マイクの前で決めました。それこそ、まっすぐに伝えよう。分からないままでも、ぐっと身体を前に進めるようにして、行動してみようと。手探りですが、正直に向き合うことで、何かにつながってくれたら。そう願っています。

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